「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「寿司」とこたえる日本人は多いと思います。私もその一人です。
しかし、生で魚介類を食べるというのはやはり、食中毒のリスクは多少ともないますよね。
これから夏本番。
今回は、魚を食べることによっておこる主な食中毒についてまとめました。
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アニサキス(寄生虫)による食中毒
今年に入って芸能人の方が、アニサキスによる食中毒になったという報道を相次いでみかけますね。(山里亮太さん、渡辺直美さん、庄司智春さんなど)
アニサキスって何?
アニサキスとは、魚介類に寄生する「寄生虫」です。
サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどに多く寄生するといわれておりますが、最近の調査では、ホッケ、サワラ、サゴシ、キンメダイ、メジマグロ、アイナメからも見つかっているという報告があります。
アニサキスは魚介類の内臓に寄生するのですが、魚介類が死亡すると、内臓から筋肉(身の部分)に移動するといわれております。
日本は寿司や刺身など、生で魚介類を食べる習慣があることから、諸外国に比べて、アニサキスの食中毒が発生する件数も多いとされております。(年間500~1000件)
アニサキスによる食中毒の症状は?
食後数時間後から十数時間後(多くは8時間以内)に、
- 激しい腹痛
- 悪心
- 吐き気
- おう吐
などがおこります。
激しい腹痛が特徴ですが、その痛さたるや、大人でも「泣くほど痛い!!」ということです。
アニサキスの食中毒になった場合病院は何科に行けばいいの?
胃腸科、消化器内科、内科などがよいでしょう。
今のところ、アニサキスの食中毒に有効な治療薬はありません。
治療方法も、アニサキスが胃にいる場合と、腸までいった場合とで違いがあるようです。
[胃にいる場合]
内視鏡を使いながら、鉗子(かんし)という外科手術時に使う器具で、アニサキスを摘出します。
[腸にいる場合]
腸にいる場合は、外科手術をしてしまうと、体にも負担がかかってしまうので、内服薬などを服用しながら、アニサキスが自然に死滅する1週間ほど待つという対症療法がおこなわれることが一般的です。
しかし、腸閉塞(ちょうへいそく)や腸穿孔(ちょうせんこう)などに進んだ場合は、外科手術をおこなう場合もあります。
アニサキスはどうしたら死滅するの?
- 加熱処理 (60℃なら1分、70℃以上なら瞬時に死滅)
- 冷凍処理(マイナス20℃で24時間以上)
- 細かく刻んで調理する(アニサキスに傷を与えると、胃や腸壁へ侵入してきにくくなる)
※注意※
アニサキスは、
・酢
・わさび
・塩
・しょうゆ
などでは死滅しないのでご注意ください。
しめさばを食べて、アニサキスの食中毒になった事例もあります。
アニサキス食中毒にならないために気をつけること
□魚の内臓を生食をしない
□魚はできるだけ新鮮なものを買い、内臓はすみやかに取り除く処理をする(時間が経つとアニサキスが内臓から身へ移動するため)
□低温(4℃以下か冷凍)で保存する
□魚を調理する時は、アニサキスがいないかよく目で見て確認する(特に内臓に近いハラス部分は気をつける)
□できるだけ加熱処理する
ヒスタミン食中毒
「ヒスチジン」というアミノ酸が多く含まれる魚と、その加工品(缶詰、干物、燻製)を食べたことによる食中毒です。
「ヒスチジン」自体は無害なのですが、時間が経過し、鮮度が落ちると「ヒスチジン」が「ヒスタミン」という成分に変わってしまい、ヒスタミンをたくさん蓄積した魚を食べることによって、食物アレルギーのような症状をおこしてしまいます。
カジキ、マグロ、ブリ、サバなどの赤身魚などでおこることが多いといわれております。
ヒスタミンは熱にも強く、一度ヒスタミンが生成されてしまった魚は、生、冷凍、調理後にかかわらず、ヒスタミン食中毒をおこす可能性があります。
ヒスタミン食中毒の症状は?
食べた後10分~30分以内(長くても3時間以内)に症状があらわれます。
症状が続く時間は、3時間~36時間(3日)以内で、ほとんどは12時間以内でおさまっていくことが多いようです。
- 発疹(顔、首など)
- じんましん
- 口や喉の痛み
- かゆみ
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 頭痛
- めまい
- 充血
など
まれに、アナフィラキシーの症状もおこることがあります。
病院に行くなら何科?
症状がつらい時は、消化器内科、または内科を受診しましょう。
病院では、抗ヒスタミン剤での治療となります。
ヒスタミン食中毒を防ぐには?
- 鮮度のいいうちに食べる(腐ったにおいがしなくても腐っていることがある)
- すぐに食べない場合は冷凍する
- 口につけた時に舌が「ピリピリ」した時は、食べるのをやめる(ヒスタミンがたくさん含まれていると、食べた時に舌がしびれるような感じになる)
フグ毒による食中毒
フグは、主に肝臓や卵巣に含まれているテトロドトキシンという毒によって、食中毒をひきおこします。フグの毒は、青酸カリの約1,000倍に匹敵するともいわれているほどの猛毒です。
特に肝臓は、食品衛生法において、種類、天然、養殖などに関わらず、販売、提供は一切禁止されております。
また近年では、太平洋沖で雑種フグが増加しているとのことです。
雑種フグは毒がどこの部位にあるのかが、ふぐの選別のプロでもわからないそうなので、自分で釣ったフグや、友人などからフグをもらって調理をして食べるなどは、絶対にやめましょう。
フグの中でもトラフグは、市場に出回っている9割が養殖だといわれております。100%安全だとは言い切れないようですが、それでも、養殖のふぐを選ぶほうが安全だといえるでしょう。
フグを食べてこんな症状が出たらすぐに病院へ!
- しびれ(顔、唇、舌など)
- 手指の先端の感覚や動きが鈍くなる
- 頭痛
- 腹痛
- 嘔吐
など
フグを食べてこのような症状が出たらすみやかに救急車を呼びましょう。
早期に治療を開始することが大切です。
腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは腸炎ビブリオという細菌による細菌性食中毒です。
刺身や寿司などで感染することがが多いようです。
海水や海の中の泥中に存在し、海水温度が15℃~20℃以上になると海水中で大量に増殖するため、夏場(7月~9月)に獲れた魚介類に、腸炎ビブリオが付着しているといわれております。
腸炎ビブリオに感染した時の症状
潜伏期間
10時間~24時間
症状
- 腹痛
- 発熱
- 下痢
- 嘔吐
などで2日~7日ほどで自然に治っていきます。
しかし免疫力が弱い子供、高齢者、または肝臓病などの持病がある人は、まれに敗血症を発症する場合もありますので、そのような場合は必ず病院を受診しましょう。
内科、胃腸科、消化器内科などがよいでしょう。
腸炎ビブリオについては、こちらの記事をご参考になさってください。
ノロウィルス
ノロウイルスに汚染された、水や食品(とくにカキなどの二枚貝)を食べることによって感染するウィルス性の食中毒です。
また、嘔吐物や糞便の処理などをさわったことによっての二次感染もあります。
流行時期は、11月~3月の冬場で、ピークは1月、2月頃です。
ノロウィルスに感染した時の症状
- 発熱(37℃~38℃の微熱)
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
などの胃腸炎をひきおこします。
ノロウィルスについては、こちらの記事をご参考になさってください。
「食中毒の症状~ノロウィルス~冬場の牡蠣は加熱して食べよう」
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下痢止め・吐き気止めは自己判断で服用しないこと
食中毒になると、細菌やウィルスを体内から外に排出しようとする体のはたらきが、「嘔吐」や「下痢」なのです。
なので、下痢止めや吐き気止めなどを飲み、無理に止めてしまうと、お腹の中から細菌やウィルスが排出されず、症状がよくなりません。
自己判断で下痢止めや吐き気止めを飲むのは絶対にやめましょう。
下痢や嘔吐がひどくつらい場合は、病院にて整腸剤を処方してくれることがあります。
ぜひ内科(子供なら小児科)、胃腸科、消化器内科の医師に相談してみましょう。
食中毒を予防するためにできること
□消費期限を確認する
□魚から出ている汁がほかの食品にうつらないようにする(ビニール袋に入れる)
□生ものは買い物の最後に買うようにする
□帰宅したらすぐに冷蔵または冷凍庫に入れる
□冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下を保つ
□調理前はせっけんをつけて手を洗う
□食材はできるかぎり流水でよく洗う
□生ものをさわった後はこまめに石けんをつけて手を洗う
□タオルや布巾は清潔なものを使う
□できるだけ加熱する
□調理前の食品、調理後の食品は長時間放置しないようにする
□温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食べるようにする
□残ったものは清潔な容器に保存する
□残ったものを食べる時は一度レンジでチンする(加熱処理をする)
□あやしい、不安な場合は、もったいなくても捨てる
食中毒に気をつけて楽しく食事ができるように注意しましょうね。
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