梅雨時あたりから心配になってくる食中毒(食あたりともいいますね)ですが、いろいろな種類の菌による食中毒があります。
今回は菌の種類別の症状や対処法、また、夏場のお弁当づくりのコツをまとめてみました。
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食中毒の原因
食中毒の原因は大きく分けて細菌性によるものとウィルス性によるものと2つあります。
細菌性食中毒 (夏場に多く発生)
1.感染型
カンピロバクター
- 原因となる食品→肉(特に鶏肉)、卵、レバーの刺身など
- 潜伏期間→2日~7日(平均2~3日)
- 症状→腹痛、下痢、発熱(微熱の場合が多い)頭痛、悪寒、だるさ、筋肉痛などの風邪のような症状があらわれ、1週間ほどで自然と治ります。回復後にギランバレー症候群を発症する場合があります。
- 食品の処理方法→加熱調理(75度以上で1分間以上の加熱)で殺菌できます。
カンピロバクターについてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
「食中毒の症状~カンピロバクター~鶏肉は中まで火を通すこと」
腸炎ビブリオ
- 原因となる食品→魚介類、刺身など
- 潜伏期間→10時間~24時間
- 症状→腹痛、発熱、下痢、嘔吐などで2日~7日ほどで治ります。
- 食品の処理方法→純水で洗うか、真水(水道水)で5分以上洗うと殺菌できます。
腸炎ビブリオについてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
腸管出血性大腸菌(O157など)
- 原因となる食品→加熱不足の牛肉や内臓、水など
- 潜伏期間→12時間~72時間
- 症状→腹痛、下痢、嘔吐、微熱などで、7~10日で治りますが、下痢発症後1週間前後に溶血性尿毒症症候群や脳症などの思い合併症を起こすことがあります。
- 食品の処理方法→加熱処理(75度以上で1分間以上加熱)で殺菌できます。
腸管出血性大腸菌O157についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
「食中毒の症状~腸管出血性大腸菌O157~感染経路は?牛肉に注意!」
サルモネラ菌
- 原因となる食品→卵、肉類、魚、マヨネーズ、ケーキなど
- 潜伏期間→8時間~48時間
- 症状→高熱、嘔吐、腹痛、下痢、血性下痢、緑がかった水様の便などで、このような症状が3~4日続きます。重症化すると腎不全をおこすことがあります。
- 食品の処理方法→長時間室温で保存しない。卵は新鮮なうちか、割ったらすぐ調理する。加熱処理(75度以上で1分間以上加熱)で殺菌できます。
サルモネラ菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
ウェルシュ菌
- 原因となる食品→肉類、魚介類、野菜が入った調理食品、カレー(大量に調理されたもの)、弁当、スープ、レトルト食品、缶詰など
- 潜伏期間→8時間~18時間(平均12時間以内)
- 症状→腹痛、下痢、血性下痢、嘔吐などで、ほとんどは1~2日で治ります。
- 食品の処理方法→普通の加熱処理では殺菌できません。家庭で作ったものから発生することは少なく、学校給食や仕出し弁当などで大規模な食中毒として起こるケースが多いです。
ウェルシュ菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
リステリア菌
- 原因となる食品→乳製品、ソフトチーズ(ナチュラルチーズ)、肉類
- 潜伏期間→12時間~91日間と範囲が広いことが特徴
- 症状→倦怠感、微熱などで、健康な大人は感染しても症状がでることなくおわる場合が多いのですが、妊婦、新生児、乳幼児、高齢者、虚弱体質の人は発症する場合が多く、重症化すると、髄膜炎、敗血症、流産を起こすこともあります。
- 食品の処理方法→加熱処理(75度以上で1分間以上加熱)で殺菌できます。しかし0度の低温でも菌は増殖しますので冷蔵庫に入ってるからといって安心できません。
リステリア菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
赤痢菌
- 原因となる食品→生水、寿司など
- 潜伏期間→1~7日(多くは4日以内)
- 症状→下痢、嘔吐、発熱、腹痛、血性下痢などで、病院にて処方されたお薬(抗菌薬など)を飲めば5日間ほどで治るといわれておりますので、海外に行ったなど心当たりのある方は早めに病院に行きましょう。
- 食品の処理方法→加熱処理(75度以上で1分間以上加熱)で殺菌できます。
赤痢菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
コレラ菌
- 原因となる食品→水、加熱不足の魚介類
- 潜伏期間→2~3日
- 症状→下痢、嘔吐、体温低下、眼球が没落、声がかすれる、皮膚がしわしわになるなど、進行すると意識障害、けいれんなどがおこり死に至る場合もあります。海外に行ったなどの心あたりのある方は早めに病院に行きましょう。
- 食品の処理方法→加熱処理(75度以上で1分間以上加熱)で殺菌できます。海外での飲食物には注意しましょう。
コレラ菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
2. 毒素型
黄色ブドウ球菌
- 原因となる食品→おにぎり、弁当、調理パン、和菓子、シュークリームなど。
- 潜伏期間→1時間~5時間(平均3時間)
- 症状→激しい嘔吐、腹痛、下痢
- 食品の処理方法→菌自体は加熱処理で死滅しますが、いったん毒素(エンテロトキシン)を発生させてしまうと熱にも強く破壊されないので、調理後長時間たって毒素を出す前にすみやかに食べてしまいましょう。
- 普段から人や動物の皮膚にいる常在菌なのですが、食品中に入ってしまうと毒素が発生します。肌荒れした手や傷口などにも多く菌がいるので調理をする場合は手袋などをつけましょう。
黄色ブドウ球菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
ボツリヌス菌
- 原因となる食品→びん詰、缶詰、容器包装詰め食品、保存食品
- 潜伏期間→8~36時間
- 症状→数日間の便秘、筋力の低下による脱力症状、眼球運動の麻痺などで、自宅で治すのは難しいのでこのような症状があらわれた場合は早めに病院に行きましょう。
- 食品の処理方法→「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」と表示してあるものは冷蔵庫に入れ期限内に食べ切りましょう。また、食べる直前に80℃で30分間の加熱処理をすれば菌は死滅します。
1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはいけません。乳児ボツリヌス症をひきおこす原因となります。
ボツリヌス菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
セレウス菌(下痢型)
- 原因となる食品→食肉を原料としたスープ、弁当、プリン
- 潜伏期間→8時間~16時間
- 症状→腹痛、下痢(ウェルシュ菌食中毒に似ている)
- 食品の処理方法→調理済み食品を長時間放置しない。すぐに食べられない場合は冷蔵庫に入れる。
セレウス菌(嘔吐型)日本ではこちらが主流
- 原因となる食品→チャーハン、ピラフ、炊き込みご飯などの米飯料理、パスタなど。
- 潜伏期間→1時間~5時間で、1~2日で自然と回復します。
- 症状→吐き気、嘔吐、腹痛(黄色ブドウ球菌食中毒に似ている)
- 食品の処理方法→度に大量の米飯料理(炊き込みご飯、チャーハンなど)や麺類の作り置きをしないようにする。
セレウス菌についてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
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ウィルス性食中毒(冬場に多く発生)
ノロウィルス
- 原因となる食品→カキなどの二枚貝
- 潜伏期間→24時間~48時間で、2~3日で回復します。しかし、2~3週間は便にウィルスが出続けるのでトイレの後はしっかり手洗い&消毒を続けましょう。
- 症状→嘔吐、下痢
- 食品の処理方法→80~90度で90秒以上の加熱処理で殺菌できます。
ノロウィルスについてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
A型肝炎ウィルス
- 原因となる食品→水、カキなどの二枚貝
- 潜伏期間→15~50日(平均30日)
- 症状→下痢、高熱、吐き気、嘔吐、倦怠感のあと黄疸が出た後回復します。一度かかると免疫ができその後感染しません。日本で感染することは少ないといわれております。海外に行って生水を飲んだり生水を使った氷菓子などを食べたりして感染する場合があるようです。
- 食品の処理方法→80~90度で90秒以上の加熱処理で殺菌できます。
A型肝炎ウィルスについてくわしくは、こちらの記事をごらんください。
梅雨時から夏にかけては細菌による食中毒が増える
梅雨時から夏にかけて(6月から9月)は細菌による食中毒が増える時期です。
理由
- 6月から9月の夏場は高温多湿になるため
- 夏バテなどによる抵抗力の低下によるもの
夏場のお弁当の注意点
- 汁がでるものは痛みやすいのでできるだけ揚げ物など水分の少ないおかずのほうがよいでしょう。
- ごはんを炊くときにお酢を加えて炊くと菌が繁殖しにくくなります。ごはんが酢くさくなるということはないので大丈夫です。配合目安→米3合に対して酢小さじ1杯くらい。
- ミニトマトはへたを取ってよく洗い水気を拭き取ってからいれるとよいです。
- 生野菜(レタスなど)とおかずをくっつけると野菜から水気がでてしまい菌が繁殖しやすくなるので、どうしても生野菜を入れたい場合は弁当箱を分けるか、弁当カップなどで仕切るとよいです。
- 前の日の夜ご飯の残りをおかずに入れる場合は必ず電子レンジなどで再加熱するようにしてくださいね。
- おにぎりをにぎるときは、ビニール手袋をつけるか、茶碗の中にラップを敷いてごはんを入れて丸めたりするなどなるべく素手でさわらないようにしたほうがよいです。
- 弁当の中身を入れたら、中身を冷ましてから蓋をするようにしましょう。熱いまま蓋をするとふたのうらに水滴がつき、その水滴が菌の繁殖を早めてしまいます。
- 保冷剤を入れてもち歩く
- 「保冷剤一体型ランチボックス・GEL-COOL」
解凍しなくてもよい冷凍食品を入れておくと保冷剤のかわりになります。またケーキを買ったときなどにつけてくれる保冷剤を弁当袋に入れて弁当箱を冷やしてもいいと思います。- 冷凍したミニカップのゼリーを弁当の中に入れておくと保冷効果&食後のデザートにもなって一石二鳥です。
弁当に入れないほうがよい食べ物
- チャーハン、炊き込みご飯
- 煮物
- 生野菜
- ポテトサラダ、マカロニサラダなどのマヨネーズ系サラダ
- 卵焼き
など
食中毒になってしまったら
下記のような症状がでたら食中毒の可能性があるので病院に行きましょう。
- 下痢が一日10回以上起こる
- 体がふらふらする
- 意識が遠くなる
- 尿が12時間以上出ない
- 下痢便がでる
- 下痢便に血が混じる
- 嘔吐をくりかえす
食中毒になったときにかかる病院は内科・小児科・感染症科などがよいでしょう。病院探しに迷った場合は、住んでいる市の保健所に電話して相談してみてもよいかと思います。保健所では便を調べて食中毒かどうかの診断もおこなってくれます。
さらに、食べたものの包装や、あれば食べ残したもの、嘔吐物、外食した場合はお店のレシートを保管しておくことにより食中毒の原因を調べたりすることもできます。
家での応急処置は?
水分補給をする
嘔吐や下痢によって脱水症状が起こりやすくなるので水・お茶・経口補水液などを飲みましょう。
吐きやすい体勢で寝る
吐いたもので喉をつまらせないためです
自己判断で下痢止め&解熱鎮痛剤を飲まない
嘔吐や下痢、発熱によって細菌や毒素を体から出そうという働きがあるので、下痢止めや解熱鎮痛剤などを飲んでしまうとお腹の中に細菌や毒素がとどまり、悪さをして症状が悪化する可能性があります。病院では整腸剤が出されることが多いです。
食事は?
嘔吐や下痢が続くときは、主に経口補水液で水分補給するとよいです。徐々に回復してきたときの食事のポイントは、今出ている便と同じくらいの固さにして食べることです。例えば、下痢がひどく水便の時は水分補給、どろどろの便が出るようになったらおもゆなどのように便の固さと合わせることがコツです。
食中毒対策
1.魚介類・肉類・卵などの生鮮食品はしっかり加熱する
しかし卵料理は加熱後もいたみやすいので注意が必要です。
※菌のなかでも特に強力と言われているO157でも「75度以上で1分間加熱」すると菌が死滅するそうですので加熱は基本です。1分以上加熱しないと死滅しない場合もあるのでとにかくしっかり中まで火を通すようにしましょう。
2.食事を作る前、食べる前には手洗いとアルコール消毒をする
3.食品を水できちんと洗う
4.二次感染を防ぐようにする
感染者の嘔吐物の処理などをした際はしっかり手を洗い、吐いた床は次亜塩酸ナトリウム液で消毒する。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
塩素系ハイターかミルトンを使います。ハイターとミルトンは
塩素系ハイター→雑貨品
ミルトン→医薬品
という違いがあります。なので床や物などの消毒にはハイターで作った消毒液。手指など肌に触れる消毒にはミルトンで作った消毒液と使い分けるとよいでしょう。
☆日常の消毒には0.02%(200ppm)次亜塩素酸ナトリウム液(薄め)
塩素系ハイターをペットボトルのキャップ4杯(20ml)に足して水5㍑
または
塩素系ハイターをペットボトルのキャップ1杯(5ml)に対して水を1.25㍑(500mlのペットボトルで2杯+500mlのペットボトルの約半分)
☆ウィルス性の嘔吐物、排泄物による汚染された場所や物の消毒には0.1%(1000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液(濃いめ)
塩素系ハイターをペットボトルのキャップ2杯(10ml)に対して水を500mlのペットボトル1本分
☆手指を消毒するための次亜塩素酸ナトリウム液
ミルトンを20倍に薄めて霧吹きなどに入れる
*ペットボトルのキャップ1杯=5ml
*1.2.3.のどれも日持ちしない(効果が薄れる)ので極力作り置きはしないようにしましょう。
*ミルトンを20倍に薄めた手指用消毒液は人体に使用できますが注意点も多くあまり体にいいものではないので、できるだけ感染性胃腸炎が治るまでとすることをおすすめします。
5.キッチンのまな板、スポンジを清潔に保つ煮沸(熱湯)消毒をする
煮沸または熱湯を1分間かける
漂白剤でつけおき殺菌する
6.生ものをつかむ箸と食事用の箸を分ける
焼肉などをするときに生の肉をのせる時の箸でそのまま食べないようにする
7.すぐ使わないものは冷凍庫で保存する
冷蔵庫に入れていても夏場は食品の傷むスピードが早まります。冷凍庫(-15度以下)で保存した場合は菌の増殖は止まります。なので、できるだけ低温で保存することをこころがけましょう。
冷蔵庫(-15度~10度以下)で保存した場合でもゆっくりですが菌は増殖します。
家族にうつさないために
- 感染者が使った食器は洗った後に熱湯をかけて消毒
- 洗濯ものは感染者のものと分けて洗う
- 感染者はお風呂は最後に入り、次の日は湯船のお湯は取り換える
- 家族が食中毒にかかったら風呂の残り湯を洗濯に使わない
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